自閉症の息子は、寝ている間しか散髪できなかった|美容師ママが完璧をやめるまで

障がいのある子との暮らし
  • 髪を切らせてくれない
  • 押さえつけないと切れない
  • 泣いて暴れて、こっちが泣きたくなる
  • 美容室なんて、連れて行けるはずがない

わたしも、ずっとそうでした。

わたしは美容師です。人の髪を切るのが仕事です。それでも、自分の息子の髪を切るのは、いちばん難しい仕事でした。

この記事は、うまく切るコツの話ではありません。「きれいに切る」のをやめるまでの話です。

結論:美容師なのに、息子を一度も美容室に連れて行っていません

先に結論を書きます。

動物柄の散髪ケープをつけて、後ろ髪を切ってもらっている子ども

わたしは息子を、一度も美容室に連れて行ったことがありません。

美容師の子どもなら、店で切ってもらえばいいと思われるかもしれません。でも、うちはそうしませんでした。一度もです。

理由は、はっきりしています。

なぜ、一度も連れて行かなかったのか

きっと、動いてしまうからです。

こちらを見ている子どもの目元のアップ

美容室の椅子に座って、じっとしていられる時間が、うちの息子にはありませんでした。ハサミを持っている人のそばで動く。それがどれだけ危ないか、仕事で分かっていました。

そして、小さい頃は今よりもずっと散髪が嫌でした。

嫌がるだけなら、まだよかったんです。それより困ったのは、こちらの言っていることが、そこまで伝わらなかったことでした。

「あと少しだよ」
「じっとしててね」

言葉で伝えて待ってもらう、ということができませんでした。だから「慣れれば大丈夫」という道が、うちにはありませんでした。

小さい頃は、寝ている間しか切れませんでした

いちばん大変だった時期のことを書きます。

畳の上で眠っている小さな子ども

起きている間は、切れませんでした。

だから、寝てから切っていました。息を止めるようにして、そっとハサミを入れる。動いたら止める。また寝るのを待つ。

美容師の仕事とは、まったく別のことをしていました。仕上がりを見る余裕はありません。起こさないことだけを考えていました。

こんな切り方、美容学校では習いません。でも、そのときのわたしにできるのは、これだけでした。

同じことをしているお母さんが、たぶんどこかにいると思います。だから書いておきます。それでいいと思います。

襟足は「短くなればいい」。形は見ていません

今は、動画を見せながら切っています。動画がないと、そもそも始まりません。

そして襟足は、形を整えるのをやめました。短くなれば、それでいいことにしています。

理由がもうひとつあります。バリカンが、くすぐったいんです。 首の後ろは特にそうだと思います。じっとしていられなくて当然です。

アタッチメントをつけたバリカンを手に持っているところ

だから後ろは「刈る」というより、「短くする」だけ。ラインは見ていません。

くすぐったがったら、無理はしません

くすぐったがったときは、押さえつけません。

「下向いてね」
「じっとしてね」

そう声をかけて、切れるところまでで終わりにします。

小さい頃は、こうやって言葉で伝えることができませんでした。それを思うと、声をかけて待てるようになっただけで、ずいぶん変わったなと思います。

15分が限界。それ以上は追いません

もうひとつ、決めていることがあります。

1回15分です。

15分を過ぎると、集中が切れます。そこから先は、切らせてくれないというより、お互いがしんどくなるだけでした。

だから、途中でも終わります。左右が揃っていなくても、終わります。

「今日はここまで」で切り上げる。 続きは、また別の日にやります。

やめたのは、完璧に切ることでした

ここまで書いてきたことを、ひとことにすると、こうなります。

やめたのは、完璧を求めることでした。

美容師なので、どこが揃っていないか、自分でぜんぶ分かります。襟足が甘いのも、左右が違うのも、見れば分かります。

分かるのに、直せない。これが、いちばんしんどいところでした。

でも、あるときから考えが変わりました。

きれいに切ることより、嫌な思いをさせずに終わることのほうが、大事でした。

きれいに切ろうとすれば、時間が延びます。時間が延びれば、息子は嫌がります。嫌がった記憶が残れば、次はもっと切らせてくれなくなります。

つまり、完璧を目指すほど、次の散髪が難しくなる。それに気づいてから、追わなくなりました。

正直に書きます:家で切る以上、仕上がりは美容室に敵いません

いいことばかり書くつもりはないので、正直なところも書いておきます。

家で切った髪は、美容室で切った髪には敵いません。

  • 襟足はどうしても甘くなります
  • 左右が完全に揃うことは、まずありません
  • 写真を撮ると、けっこう分かります

これは、腕の問題ではありません。動く子を、限られた時間で切っているからです。プロがやっても同じです。

ただ、これは伸びれば分からなくなります。うちは短く刈り込みすぎないようにして、差が目立たないようにしています。それでだいぶ気にならなくなりました。

「完璧じゃない」と「困っている」は、別のことです。困っていないなら、それで足ります。

まとめ

  • 美容師ですが、息子を一度も美容室に連れて行っていません
  • 動いてしまうこと、言葉が伝わりにくかったことが理由です
  • 小さい頃は、寝ている間にしか切れませんでした
  • 今は動画を見せながら。襟足は形を見ず、短くなればいいことにしました
  • バリカンがくすぐったいので、無理はさせません
  • 1回15分。途中でも終わりにします
  • やめたのは、完璧に切ることでした

もし今、押さえつけてでも最後まで切ろうとしているなら、途中でやめてみてください。

左右が揃っていない日があっても、大丈夫です。今日切れなかったところは、また明日切ればいいです。

まずは、15分で切り上げてみるところからでいいと思います。

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